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足寄物語~Ashoro Stories その25 「ダイニングバー Rocca(ロッカ)」

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「北海道に憧れがあって、丁度友達が北海道の牧場で働いているっていうんで、自分も雇ってもらったんですが、それが足寄の牧場だったんです。

17年くらい前やったかなぁ。」ほんのりと関西訛りでそう話してくれたのは、足寄の道の駅のすぐそばにあるダイニングバー「Rocca(ロッカ)」の

オーナーシェフ「伊藤隆之(いとう たかゆき)」だ。この「Rocca」のある場所は、このコラムにも登場した「ハウス焼肉亭」の時に名前を出した

「ラッキー亭」のあった場所。今は広々とした駐車スペースの端にこじんまりと、しかしセンスの良さを感じるお洒落なお店が建っている。

 

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「Rocca」の前身は、足寄で羊飼いをする「石田めん羊牧場」が、自身で育てた羊の肉を美味しく食べてほしいとオープンさせた「ヒツジ堂」だった。「ヒツジ堂」は、およそ5年程お店を開いていたが、2017年のクリスマスの夜を持ってその歴史に幕を閉じる。伊藤は、その「ヒツジ堂」でシェフと

して雇われていた人物だ。1979年に神戸市で生まれた伊藤は、中学を卒業すると、通っていた空手道場の指導をする程の腕前を持つ空手家だった。

そもそも彼は、料理好きではあったものの、その道に進もうとは思っていなかったそう。これまでの職業歴を聞くと、「色々やったからなぁ。舗装、

型枠大工、喫茶店でも働いたし・・・。」22、3歳ころまでは神戸でそんな生活を送っていた。その後、長野県のホテルの厨房を手伝ったり、レストランでも働くなど、少しずつ料理の世界に近づいて行ったのだが、次に伊藤が選んだのが、冒頭で書いたように足寄の牧場だった。しかしこの選択が、今の「Rocca」へと繋がっていく布石だったのだ。

 

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「トータルで3年程働きましたかねぇ。その時に石田さんと知り合ったんですよね。」しかし、この時は再び足寄に戻ってくるとは、想像もしていなかった。足寄の牧場を辞めた伊藤は、箱根にある小さな温泉宿で働きだす。そこでは得意の料理もしたし、その他の仕事もやった。そして一人の女性と

運命の出会いも果たした。現在、共に「Rocca」を切り盛りするパートナー「茂美(しげみ)」さんだ。彼女は伊藤よりも年上だったが、それまで「根無し草」要素たっぷりだった伊藤の根っことなり、支えてくれる存在となった。

そんな風に箱根で楽しく働いていたが、「年に1回長期の休みをくれるんですが、その時に足寄に遊びには来てたんですよね。」

足寄の自然を気に入っていた伊藤と足寄の縁は、箱根に越した後も切れてはいなかった。

そしてその縁は、石田さんの一言で切っても切れないものとなる。

 

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それは、伊藤が足寄を訪れていた夜の事だった。石田さんと酒を酌み交わしていたその夜、石田さんはおもむろに伊藤にこう切り出した。

「実は羊のレストランを開きたいんだけど、シェフがいなくて困ってるんだ。茂美さんと二人でお店をやってくれないか?」

実はこの時、石田さんは伊藤が料理好きで自身でも料理を作ることは知らなかったという。

どちらかと言えば、以前オーベルジュで働いていた茂美さんを当てにしていたのだ。

このオファーに対して伊藤は、「それ以前から、二人で北海道への移住を考えていたので、仕事があるならこれを機に足寄に行っちゃおうかって。決めちゃいました。」牧場で働いていた伊藤は元より、実は茂美さんもまた北海道に憧れていたという。果たして二人は、箱根を後にし足寄にやって来たのだが、茂美さんが足寄を訪れるのは、その時が2回目だったという。2回目で移住!? そう彼女もまた旅人だったのだ。

 

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こうして二人は、「ヒツジ堂」で働き始める。当たり前だが料理は羊肉を使ったものが多かったからジンギスカン以外の羊料理を食べ慣れない足寄の人よりも、町外からのお客さんが多かったという。

「ヒツジ堂の時も皆さん良くはしてくれたんですが、なんとなくまだ『ヨソ者感』があったんですよね。」茂美さんは、そう感じていたという。

だから、「ヒツジ堂」が閉まると決まった時、「生活しなきゃいけないし、就職の面接行く一歩手前でした。」と伊藤は、その頃の事を話してくれた。

では二人を、足寄から出ていく一歩手前で留まらせたその理由とは、一体なんだったのだろう?

「足寄の常連さんが、『他所へ行かないでって。応援するからって。』そう言ってくれたんです。」

茂美さんはそう話すと、続けて「じゃあこんな良い場所だし、やろうか!って。」

二人は、「ヒツジ堂」が閉店すると、そのまま独立して「Rocca」を開いた。

 

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「Rocca」という名前の由来を問うと、「十勝で、馴染みがあって覚えやすいって事で『六花亭』を元にしました。」と伊藤はそう答えた。

しかし、そう答えておきながら「まあもう一つ意味があるんですけどね。」とニヤリ。そしてその知りたい「もう一つの意味」は教えてくれない。

この男は、彼の生まれた関西で言う「イケズ」だ。「僕は〇〇が好きなんですよ。」と自分の趣味を自分から言っておきながら、「でもこれは書かないでくださいね。」と言い。最後に「写真撮らせてください。」とカメラを向けると「イヤです。」と拒否をした。

イケズやわぁ。でもそんな、イケズでヘソ曲がりなところ、嫌いではない。そもそも自分が相当のヘソ曲がりの偏屈オヤジだし。

 

さて、そんな秘密の意味を持つ「Rocca」のコンセプトは「お酒をメインに、料理はそれに合うものを」。

お酒をメインにというだけあって「Rocca」はお酒、特にビールにはこだわりがある。茂美さんは、「自分たちがビール好きなので、お客さんにも美味しいビールを飲んでほしい。」とそう話してくれた。元々「Rocca」は、足寄・本別・陸別の有志が集って作った「ミツマチクラフト」を初め、全国各地のクラフトビールを豊富に取り揃えていた。ただ、今はコロナ禍の影響がまだ残っているため、消費期限の短いクラフトビールはお休みしているという。その代わり!と言ってはなんだが、「Rocca」は「パーフェクトクラシックが飲めるお店」だ。これはサッポロビールの専門部署が、「サッポロクラシック」「エビス」「サッポロ黒ラベル」の3銘柄の生ビールを置くお店を抜き打ちで廻り、正しくお客様に提供しているかをチェックし、厳しい合格基準を充たしたお店にだけ与えられる称号だ。この辺りでは「Rocca」しかこの称号を手にしていない。「パーフェクトクラシックが飲めるお店」に認定されると認定書に加えて、特許を取ったというビールサーバーのコック。そして専用のグラスやジョッキが送られる。

特製のコックからは、クリーミーでのど越し最高な泡を湛えた最上級のクラシックを味わう事が出来るのだ。

「Rocca」を訪れ、サッポロクラシックを飲んだ客は、こう言って驚くそう。「ナニ!?このビール!うまっ!!」

 

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ビール以外にも「Rocca」は美味しいお酒を取りそろえる。町の規模の割にスナックが多い足寄。それらのお店のウイスキーはほとんどが国産銘柄

ため、「Rocca」では敢えて海外のものを取り揃えている。

スコッチを中心に、アイリッシュ、バーボンなどのウイスキーが飲めるが、その銘柄もなかなか通好みが揃う。個人的には、スコッチウイスキーの

聖地、スコットランドのアイラ島で蒸留された銘柄の中でも「ボウモア」があるのが、嬉しい。

ウイスキー以外にもワインやリキュール類も厳選したものを置いているので、洋酒が好きな方もきっと満足するはずだ。

 

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こだわりの酒の次は、料理。こだわりの酒に合う料理をというコンセプトだから、料理にこだわりがない訳がない。しかし伊藤は、「別に野菜などは旬の時期には『寄って美菜』で地元のものを買いますけど、特別こだわっている事もないですよ。」と素気ない。

しかしそこは先程も言ったように「イケズ」な彼。「でもにんにくとかそういったものは、国産しか使いませんね。」あるじゃない。あるじゃない。

こだわりが。メニューを見れば「北十勝ファーム」の「短角牛」に、要予約だが「石田めん羊牧場」の羊肉を使った料理もある。

また牧草だけで育てた「兼古牧場」の「雲海牛」も運が良ければいただけるそうだ。こんな風に足寄の美味しい食材を、美味しく料理して、美味しい

お酒と一緒にいただける。そう「美味しい」が「Rocca」最大のこだわりなのだ。

 

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伊藤に「将来の夢とかビジョンは?」と問いかけると、「コロナのおかげでパッタリと消えちゃいました。」と一言。コロナ禍で大打撃を受けた飲食店は足寄も都会と同じだ。「今もまだ平日は全くダメですね。週末は動き出してはきてますが、2次会、3次会が少なくなった。」 聞くと月曜日から木曜日まで客が0の日もあったという。

「とりあえず今はまずコロナの前のように戻す事かな。」伊藤は自身を奮い立たせるようにそう言うと真っすぐにこちらを見た。

 

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本州から移住してきた二人に足寄の「良いところは?」と聞くと、逆に「帰って来てみてどこがイイです?」とまたイケズな答えが返ってきた。

「うーん。特別なモノはなにもないけど。でもよーく見たり、聞いたり、歩いたりすると、『アレ?意外とイイとこあるじゃん。』って思うかなぁ。」と返答すると、茂美さんが、「そうなんだよ!!そうなの!!そうなの!!」と同意してくれた。二人はそれを受けるように「神戸生まれの神戸育ちだから、足寄の自然に入ると人工物から遮断されるからメチャクチャ気に入ってる。」「私は愛知のホントに田舎だったから、都会に住むよりもこういうところが好き。」とそう話してくれた。

 

「ヒツジ堂」の頃は、ほとんどの客が町外の人だったというが、今の「Rocca」は、99パーセントが足寄の人だという。

茂美さんは、「町を歩いていると、お客さんと会ったりするから、手を振ったり、声をかけたり、かけられたりして。やっと町に馴染んだのかな。」とポツリ。それを聞いた伊藤が、「寒いのも二人とも好きだしな。」とボソッと呟いた。すると間髪入れずに「大好き!マイナス20度でも大好き!!」と茂美さんが声を弾ませた。

 

もう二人は「ヨソ者」なんかじゃない。「足寄の人」だ。「『Rocca』のマスター!とママ!」で通じる「足寄の人」だ。

そんな二人に会いに「Rocca」に行ってみたらいい。行って「Rocca」の「美味しい」を確かめてみたらいい。

マスターが秘密にする趣味も、店の名前のもう一つの意味も、「Rocca」で直接聞いてみたらいい。

イケズだから、きっと教えてはくれないはずだ。

 

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「ダイニングバー Rocca(ロッカ)」

足寄郡足寄町南1条1丁目14  (0156)28-0472 営業時間 18:00~24:00 日曜定休

 

「Rocca」 Instagram

https://www.instagram.com/rocca.0315/?hl=ja

 

 

※ コラム内の情報は、2023年6月現在の情報です。

 

 

 

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