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足寄物語~Ashoro Stories その8 あしょろ銘店探訪#2 「焼肉 なんだてい」

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道の駅「あしょろ銀河ホール21」には、町のランチ情報として銘店18店舗を1枚づつカードにして紹介する「あしょろ銘店発掘PROJECT」通称「銘店カード」が置いてある。その足寄の銘店を順に紹介していこうという「あしょろ銘店探訪」シリーズ、1回目の「丸三真鍋」に続いて、カードを引き当てたのは足寄町旭町にある「焼肉なんだてい」。自分が10代の頃にはなかった店だ。そもそもあの頃、足寄にあった焼肉屋は「ラッキー亭」しかなかったと記憶している。さあどんなお店だろう?

 

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さて「なんだてい」の話しに移る前に「なんだてい」のある旭町について書いておきたい。

足寄の中心部、道の駅から国道241号をオンネトー方面に進み、役場の前を通りすぎるとすぐに利別川を渡る。その昔、この利別川を境に西足寄と足寄に分かれ、西足寄が十勝、足寄は釧路管内に属していた。

だからこの2つの町をつなぐ橋は「両国橋」と名付けられ、両国橋を渡った足寄村の中心部が今は旭町となっている。この旭町には今はもう閉校となったが、足寄町で最初に開校した「足寄町立東小学校」があり、自分はスクールバスに乗って毎日ここに通っていた。だから旭町には思い入れがたっぷりとある。

学校の周りに並ぶ平屋の町営住宅。グラウンドをぐるりと囲んだポプラ並木。完成の日の目を見なかった旧国鉄白糠線は、学校の裏手に盛り土がされ、あとは線路を引くばかりで寂しく佇んでいた。白糠線に登るのは禁止されていたが、悪ガキはお構いなしで急な土手をよじ登りコオロギを捕まえた。

東小は自分が5年生まで旭町と新町に加えて共栄、平和、そして愛冠と鷲府の子供たちが通っていたが、1学年30人ちょっと、各学年は1クラスづつしかなく、クラスメートは兄弟姉妹のように学び、遊び、育った。同級生に旭町の商店の息子がいた。「まっちゃん」と呼んでいた。学校が終わり、スクールバスの時間まで間があると、まっちゃんについていく。まっちゃんはお店から家に入るのだが、店の従業員が「まっちゃん、今日おやつ何にする?」と聞き、まっちゃんは、自分の好きなお菓子を選んで家へ上がる。これがうらやましくてうらやましくて堪らなかった。何せ、こっちはおやつなどと洒落たものなど与えられた事がない。学校から帰ればその辺になっているグスベリやら山桜桃やらオンコの実がおやつ替わりだ。商店のうちの子になりたいとどれ程願った事か。そのまっちゃん家は今も旭町にある。南田商店だ。

 

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自分が恋焦がれた南田商店は今のお店の道路を挟んだ隣にあった。現在のお店は1988年に建てられた店舗だ。初代は「南田美雄(みなみだよしお)」。まっちゃんのお父さんで昭和35年に南田商店を創業したという。そしてまっちゃんには2人の兄ちゃんがいた。その2番目の兄ちゃん「南田弘行(みなみだひろゆき)」こそ南田商店の2代目にして、今回銘店カードで引き当てた「なんだてい」の創業者だ。

店の名前の由来はすぐに分かるだろう。「南田」を音読みして「なんだ」。弘行は、通称「なんださん」と呼ばれている。まっちゃんの兄ちゃんのなんださんは、子供の頃スケートが速く、剣道を一緒に習っていた。高校生の頃はリーゼントにダボダボの学生ズボンだったが、自分の姉と同級生だった事もあり、弟のように接してくれた。足寄高校を卒業したなんださんは東京に進学。大学を卒業後、3年程サラリーマンをしていたというが「どんな仕事?」と聞いても教えてくれない。なにやら危険な匂いがしたのでそれ以上は追及しなかった。

 

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1988年、お店を新しくするのと同時になんださんは初代である父に呼び戻され、足寄に戻り家業を継いだ。最初は必死に仕事を覚える毎日だったが、2~3年経つと都会で仕事をしてきた自分の考えと、町に住む人々との考え方のギャップに悩み、「もうここには居られない。」とまで思いつめた。

しかし、父が創り、旭町の住人に愛される南田商店を放り出す訳にはいかない。なんださんは苦しい気持ちに蓋をして働きに働いた。気がつくと40代半ばになっていた。「あぁ。オレはこのまま足寄に骨を埋めるんだろうなぁ。」そう思った。しかしこれは諦めではない。決心だ。その証拠に「40代のうちになにかしてやろう!」と「なんだてい」をオープンさせた。2008年、なんださんが足寄に帰ってきて丁度20年後の事だった。

 

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「なにかしよう!」と思ったなんださんだが、どうして焼肉屋だったのだろう?「んー?今更、寿司職人にはなれんしなぁ。」なんださんは、そう言ってお道化てみせた。南田商店は街のお店屋さんだ。

生活雑貨から食品まで取り揃えている。もちろん肉も売っていたから、なんださんは、自然と肉の目利きを身につけていた。「だから焼肉屋がいいかなって思ってさ。」と決めた。そして決めてからは研究のため、方々の焼肉屋に足を運び、味を追求した。扱う肉は和牛のブランド牛が中心。「松阪牛」「宮崎和牛」に「茨城ときわ牛」、「熊本あか牛」などその時々でいい肉を厳選して仕入れる。もちろん足寄の牛だってある。足寄町の「ふるさと納税」の返礼品にも肉を提供する「北十勝ファーム」の「短角牛」だ。短角牛とは、南部牛とショートホーン種とを交配させ1956年に日本短角種として誕生した牛で、赤身肉が美味しいと評判の牛だ。そんなおいしい肉がランチや定食で安く気軽に味わえる。「なんだてい」のランチは、丼物と洋食の定食で曜日別にメニューが決まっている。また希望するなら通常メニューの焼肉定食も各種味わえるという。丼物の値段はなんと1コイン=500円。「豚カルビ丼」や「牛並カルビ丼」「牛並サガリ丼」などがあり、これに醤油ラーメンハーフをセットにしても995円だ。そして洋食の定食は、「エビフライ定食」「メンチカツ定食」に「ハンバーグ定食」などで698円。安くて美味しくてお腹いっぱいになる。

 

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この日、なんださんは、可愛い後輩にランチでも食べる事が出来るという焼肉定食の中から「特上カルビ定食」を御馳走してくれた。赤身と霜降りのバランスが最高のカルビ肉が8枚!これに野菜とごはん、スープに、サラダにキムチが付いた。柔らかく、かと言って歯ごたえがない訳ではないカルビ肉。

焼き網に乗せると「ジューゥゥゥ」っと夢のような音を奏でた。あまり焼きすぎては折角の肉が台無しだ。慎重に肉に火を通し、研究に研究を重ねたあっさりとした付けダレをくぐらせ頬張ると、思わず「よ!なんだてぇぇぇ!」と叫びたくなった。白メシが進むこと、進むこと。次は絶対にビールで流し込んでやろうと固く心に誓った。

 

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「なんだてい」には意外や町外からのお客様も多いそうだ。本別、陸別の両隣りはもちろん、十勝管内全般に加えて札幌や知床、羅臼、中標津など足寄に来たら必ず立ち寄るという常連さんがいるのだ。そんな「なんだてい」フリークは口々に「他で肉は食えない」と言ってくれるそう。そんなありがたい常連さんに対し、なんださんは感謝の気持ちと共に自負も口にした。「でもそれだけいい肉使ってるからな。」

商売人としての厳しい目を持ち、妥協を許さないなんださんは、過疎にさらされる故郷の現状にも厳しい目を向けていた。そんな話しがしばし続き、「あまりいい事ないね。」と言った新参のUターン町民に対し、なんださんはこう言った。「いい事もあるさ。お前帰ってきたべや。」

この言葉が毎日少しづつ、もみダレのように自分の身体中に沁みてきている。

 

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なんださんに「おすすめは?」と聞くと、壁を隔てた隣の小上がりから間髪入れず、「牛タン!」と声が聞こえた。声の主は奥様だった。奥さんがそれだけ自信を持つだけあって壁に貼られた「焼肉人気ランキング」の1位は「厚切りタン」、2位が「上タン」だった。今度は牛タンもビールで流し込んでやろう。さて「なんだてい」には自慢の肉の他に海鮮もあるし、バラエティ豊かなサイドメニューもある。

足寄を訪れた際には、ランチに夕食に是非ご利用いただきたい。もちろん足寄の人にも。ちょっと強面だけど実はやさしいなんださんと、気っ風の良い奥様が迎えてくれる。

店の名は「焼肉なんだてい」。両国橋を渡るとすぐ右にある、まっちゃんの兄ちゃんの店さ。

 

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「あしょろ銘店発掘プロジェクト No.16『焼肉 なんだてい』」足寄町旭町2丁目 (0156)25-5439

営業時間 11:30-13:30、17:30-21:00 不定休

 

※ 料金等の情報は2021年現在の情報です。

このページの情報に関するお問い合わせ

足寄町役場 経済課商工観光振興室商工観光・エネルギー担当

電話番号
0156-28-3863(直通)

足寄物語

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