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足寄物語~Ashoro Stories その5 あしょろ銘店探訪#1 「丸三真鍋」

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道の駅「あしょろ銀河ホール21」のエントランスを入るとエレベーター前に「足寄町内おすすめランチ情報」と題し、町のおいしいお店18店舗のカードが置かれており、カードには「あしょろ銘店発掘プロジェクト」とそう書かれている。

思い返せば自分が子供の頃も足寄にはたくさんの銘店があった。当時はラーメンを食べに連れて行ってもらうのがなによりの御馳走で、2020年に惜しまれながら閉店となった足寄っ子のソウルラーメン「あさの食堂」を始め、三笠通りの「権平」、駅前の通りにあったスーパー、フードセンター2階の食堂でもよくラーメンを食べた。ラーメン以外だとやっぱり「斉藤まんじゅう屋」のおにぎりや団子!

中高生になると「カトレア」や昔の「六文銭」に入り浸った。そのどれもが懐かしいのだが「六文銭」以外はもうない・・・。しかし!ノスタルジーに浸っている暇などはないのだ。自分が足寄にいなかった35年の間に足寄には新しい銘店が出来ていた。それらが一堂に介したのがこの「あしょろ銘店発掘プロジェクト」。18のお店が1枚1枚カードになり飾られている。これはこの「足寄物語 ~ Ashoro Stories」で取り上げなければいけない!頼まれもしないのにそんな使命感に駆られてしまった。

そうだ!このシリーズは「あしょろ銘店探訪」と名付けよう!

 

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この通称「銘店カード」にはお店ごとにナンバーが振られているが1番から順に行ったのでは面白くない。なのでトランプを切るようにカードを切り、目をつむって「エイヤー!」とデスクに置き一番上に出たカードのお店から探訪する事にした。「エイヤー!」さあ記念すべき最初のお店は!

 

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おぉ!「新しい店ができていた!」などと息巻いていたが出たのは足寄の老舗中の老舗「丸三真鍋」。

お蕎麦屋さんだ。正直なところ足寄にいた頃はまだ子供で「蕎麦を食べに行こう!」とはならず来店した事はなかったが、祖父が蕎麦好きでいつも「丸三、丸三」と言っていたし、お店の存在はもちろん知っていた。そんな自分も、もういっぱしの蕎麦好き。「違いの分かる男」に十分成長した。つもりだ。

「丁度昼時、蕎麦でもたぐりに行ってみるか。」と急に通ぶった「『違いの分かる男』のつもり」は、道の駅から程近い「丸三真鍋」へと向かった。

 

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暖簾をくぐると迎えてくれたのは「真鍋雅美(まなべまさみ)」。「丸三真鍋」の三代目その人だ。一瞬気難しそうな職人さんか?と思ったのだがその不安は話しを始めると瞬時に吹き飛んだ。とても話し好きで気さくな人だった。そんな三代目にこの「丸三真鍋」の歴史を聞いてみた。

「元々は駅前で旅館をやってたんだ。」そう、真鍋家は戦前から足寄の駅前で旅館を営んでいた。

平成19年に発行された「足寄百年史」には大正14年から15年の「十勝新聞」「釧路新聞」の年賀広告の商業者名が掲載されているが、その中に「真鍋旅館」の名前を見つける事が出来る。そしてそこにある名前「真鍋福太郎」こそ三代目の祖父で今の「丸三真鍋」の初代にあたる人だ。

旅館を経営していた福太郎は、昭和20年に隣町の本別が空襲されると「足寄も狙われるのではないか?だったら駅前は危ない。」と旅館をたたみ街の外れに疎開してしまう。

そして終戦から3年後の昭和23年、現在の場所に妻の「シゲ」と共に前身である「お多福食堂」を創業。店は主にシゲさんが切り盛りしていたようだ。

その後屋号を「丸三食堂」と改め、それからは足寄の人に「丸三、丸三」と呼ばれ令和の今も親しまれている。なのでここでも「丸三」と呼ばせていただこう。

さてその「丸三」の銘店カードには「『三笠』って名前は、足寄の誇りなんだ。」というコピーが書かれている。一体なんの事だ?とお思いだろう。実は「丸三」のすぐそばの通りは「三笠通り」と呼ばれ、かつては商店、食堂、劇場から喫茶店、パチンコ店に旅館、銭湯、居酒屋にスナックなどなどが軒を連ねる足寄一、賑やかな通りだった。そしてその名前の由来にはこんな逸話がある。

昭和25年の夏、視察のため来道された「三笠宮崇仁(みかさのみやたかひと)」さまが帯広から阿寒湖畔に向かわれる途中、昼食を摂るため立ち寄られたのが足寄町だった。この時、三笠宮殿下をおもてなししたのが、この通りにあった大邸宅で、殿下御夫妻がこの通りを歩かれた事からそれを記念して「三笠通り」と名付けられたのだ。

そしてこの時、殿下の昼食に抜擢されたのが当時の「お多福食堂」の蕎麦。シゲさんの打った蕎麦を食べた殿下は、「山海の珍味よりもおいしかった。」とお喜びになったという。その後、「丸三」には「三笠そば」なるメニューも誕生。知らない人にはこの「三笠そば」が屋号だと思われるくらい店の代名詞となった。そんなストーリーがあって銘店カードには「『三笠』って名前は、足寄の誇りなんだ。」と書かれているという訳だ。

 

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三代目の「真鍋雅美」は昭和34年、当時「丸三食堂」の支店があった帯広で、父で二代目の「重幸」と母「美磋子」の長男として生まれた。

足寄高校を卒業後、東京の短大を出ると、京都の料理屋に入ったが修業はきつかった。店の地下室に住み込み、寝ている以外は仕事、仕事に明け暮れる毎日だったという。そして3年後、修行した店の主人がオーストラリア・メルボルンで日本食のお店をやっている知り合いを紹介してくれた。三代目は誘われるままにワーキングホリデーを利用しオーストラリアへ。当初は1年だけと思っていたが、今度はメルボルンで知り合ったお店の人に「永住権を取ってやるから、1回帰ってまた戻って来い。」と誘われ、結局都合5年間をオーストラリアで過ごす事になる。三代目は当時を振り返り「気候はいいし、そんなにジャカスカ働かなくていいし、労働者天国みたいな国だった。例えばオレが次男坊、三男坊だったら帰ってきたくなかったんじゃないか。」そう、三代目は長男だったから足寄に、「丸三」に帰ってきたのだ。

「まあオレたちの時代は商売やってる家の長男はみんな家を継いだんだよ。だから慣例に倣ってってやつだな。」28歳で「丸三」に帰ってきた三代目は、父に蕎麦作りを学び、店を引き継ぎ、「丸三食堂」を「丸三真鍋」と変えて今も暖簾を繋いでいる。店には帳簿仕事に長けていたという二代目愛用の算盤が無造作に置かれ三代目をそっと見守っている。

 

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銘店カードには「丸三真鍋」のおすすめメニューとして「松セット」が挙げられている。これは鶏肉としいたけを卵で閉じたお店の看板「三笠そば」と「天丼」のセットだ。

二代目の時代は町の人口も多く、オーソドックスな蕎麦メニューで十分に忙しかったそうだが、三代目になってご飯物やこうしたセット物、あとはセイロ物など新しいメニューを次々と増やしている。

蕎麦通を気取った「『違いの分かる男』のつもり」は、たくさんあるメニューに目移りしながら銘店カードおすすめの「松セット」ではなく「ぶたそば」なるものを選んだ。

実はこれあたたかい蕎麦の上にローストポークをこれでもかと乗せた逸品なのだ。蕎麦にローストポーク?これがオーストラリア仕込みのセンスなのだろうか?そう聞くと三代目は、「いや別に。チャーシューメンみたいなイメージだ。」と素気なく答えた。果たして目の前に出された「ぶたそば」は店主の言う通り「チャーシューメン」にしか見えなかった。しかし食べてみるとチャーシューとは全く違うあっさりとした味付けのローストポークが蕎麦のつゆにしっかりと馴染みイメージとは全く違うおいしさ。

「これだけって人もいるんだよなぁ。」と三代目がポツリ。ここでしか味わえない逸品をいただいた。

 

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「丸三真鍋」の蕎麦は、道北の風連町や道東の中標津町などから玄蕎麦を1年分仕入れ倉庫で保管。

自家製粉している。そんなこだわりの蕎麦粉を使った蕎麦メニューは本当に豊富で足寄町にお越しの際には是非とも味わってほしい。

またこの蕎麦粉を使って作るサーターアンダギー風の「ドーナツ」も甘さ控えめで美味。隠れた人気メニューだそうだ。ちなみに以前は「スコーン」も作っていたが、三代目曰く「年配のお客さんが多いから『スコーン』ったって誰も分からんから売れない。」と今はドーナツのみの販売だそう。

そして「丸三真鍋」にはテイクアウトメニューもある。ゆでた蕎麦とつゆをセットにした「お土産そば」。更に、天丼各種に「ぶたそば」に乗っているローストポークを使った「ローストポーク丼」がお持ち帰りできる。コロナ禍の今、家に持ち帰ってゆっくりと舌鼓を打つのもまたいいだろう。

創業73年、3代に渡って足寄の人々に愛されてきた「丸三真鍋」、うちのじいさんも父親も親しみを込めて「丸三」と呼んできた。だから自分も「丸三」と呼ぶ。間違いなく足寄の銘店の一つである。

 

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「あしょろ銘店発掘プロジェクト No.14『丸三真鍋』」足寄町南2条2丁目 (0156)25-2644 

営業時間 11:00-15:00、17:00-20:00 月曜定休

https://www.facebook.com/marusanmanabe/

 

このページの情報に関するお問い合わせ

足寄町役場 経済課商工観光振興室商工観光・エネルギー担当

電話番号
0156-28-3863(直通)

足寄物語

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