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足寄物語~Ashoro Stories その19「手作りお菓子 しょうげつ」

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本別や上士幌から足寄に入り市街に向かうと、道の駅の少し手前の左手に黄色くて可愛らしいお店が建っている。

看板には、「手作りお菓子 しょうげつ」。足寄でたった一軒のお菓子屋さんだ。この「しょうげつ」は、自分が子供の頃は「松月堂」という和菓子の

お店だった。子供だったからどうしても洋菓子の方が好みだったし、実は餡子が苦手な事もあり、「松月堂」に行く時はもっぱら母親のお供だった。

ただし、「松月堂」は、足寄高校に通う通学路にあったから、高校時代は毎朝、毎夕お店の前を通っていたし、隣に「六文銭」という喫茶店があって、ここに入り浸っていたので、いつも「松月堂」は傍にあった気がする。店はお菓子を販売するスペースと小さな喫茶スペースがあり、お店の壁には

コーヒーカップを模した絵柄の看板に「パーラー松月」と書かれていた。

 

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足寄に「たった一軒」と書いたが、実は正確には二軒になる。足寄で行列の出来る店として知られ、「高パン」の愛称で親しまれている「高橋パン屋」だ。これで分かる通り、高橋さんはパンが有名。しかし、「高パン」の正式な店名は「高橋菓子店」である。その名の通りに昔は洋菓子に和菓子も売っていたと記憶しているし、現在もおはぎや桜餅などわずかではあるがそんなお菓子も販売しているが、まあその辺はいずれこのコラムで取り上げなくてはいけない名店なので、それまでお預けという事でお許しを。さて自分の記憶の中の足寄のお菓子屋さんを振り返ると、足寄の駅前にあったのが「いずみ」。洋菓子店で2階はパーラーだった。考えてみればこの「パーラー」という言葉も懐かしい。「パーラーいずみ」には、インベーダーゲームが置いてあって中学生の頃はゲームやりたさに通ったものだ。そして、駅から阿寒方面に向かう国道沿いの「駅前通り商店街」には、「平野菓子舗」があった。こちらは和菓子と洋菓子両方あり、「ラワン蕗」とか「足寄だべさ」など地元のお土産になるようなお菓子に加えて、自分が好きだったのは、

「シュークリーム」。小ぶりのシューに、生クリームがびっしりと詰まっていた。そして外せないのが、「三笠通り商店街」の「かめや」。

松山千春先輩も好きだったという「ポッケ」や「あしょろの街」などの銘菓で知られていた。しかし今は昔、もうどのお店も閉店し、残った店舗跡が

寂しく佇む有り様は、おじさんを一気にノスタルジックな世界へと誘ってくれるのだった。

 

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足寄の町で次々とお菓子屋さんが廃業する中、「手作りお菓子 しょうげつ」は、今年で創業71年を迎えた。創業者は、「両角 章(もろずみ・あきら)」。足寄の「松月堂」の初代だ。「足寄の」と書いたのは、お隣の町、本別にも「松月堂」が存在し、章さんはこの本別の「松月堂」で修行し、

暖簾分けという形で1951年、昭和26年に足寄に「松月堂」を開店した。当時の店の写真を見ると、看板には「松月堂支店」と書かれている。

そして初代から店を受け継いだのは、2代目の「孝明(よしあき)」さん。自分が子供の頃に「松月堂」を切り盛りしていたのは、この「孝明」さんと、奥様の「公子(きみこ)」さんだ。二人は、名産のラワンブキが入った羊羹など町のお土産となるお菓子を作ったり、パーラーを併設するなど新しい取り組みにチャレンジした。そんな「松月堂」を洋菓子のお店として生まれ変わらせ、当代を務めるのが、「両角修寛(もろずみ・のぶひろ)・清香(さやか)」夫妻だ。3代目は、職人肌な雰囲気を纏いつつ、どこかパティシエという華やかさを感じさせる。一方、奥様は理路整然とした受け答えですぐに聡明な女性だと分かるし、素敵な笑顔で店の接客を一手に引き受ける看板娘だ。

 

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「手作りお菓子 しょうげつ」の3代目「両角修寛」は、男ばかり3人兄弟の次男として足寄に生まれ、高校までを足寄で育った。

幼い頃からお店が忙しくて母がご飯仕度など出来ないときは、自分で仕度をして食べていたというから、食事を作ったりする事は好きな性分だったようだ。聞くと、忙しい時には父と母を助け、菓子作りも手伝っていたという。日頃両親には「好きな事をやりなさい。」と伝えられていたからか、本来ならば稼業を継ぐはずの兄は、早くから自分の進む道を定め、高校も町外に出た事から、中学生だった修寛少年は、「自分が継ぐんだろうなぁ。」と漠然とそう思っていたそうだ。だから高校を卒業すると、すぐにパティシエを目指して、洋菓子店に就職した。お店は千歳を振り出しにその後東京へ。

北海道に戻ってからは札幌、帯広と徐々に足寄との距離を詰めていき、ついに今から15年前、店舗を新しくする事になったのを契機に、満を持して故郷足寄に舞い戻った。しかし、実家は和菓子屋だったのに、どうしてパティシエを選択したのだろうか? 3代目にそんな疑問をぶつけると「和菓子より、

洋菓子の方が好きだったから・・・。」と、これ程明快な答えは他にない答えが返ってきた。

 

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3代目を影日向に支える奥様の「清香」さんは、札幌の出身。3代目とは札幌の洋菓子店で同僚として運命の出会いを果たした。そんな都会生まれで

都会育ちの奥様は、足寄という田舎町に来るのに抵抗はなかったか?そう問うと、「なかった訳じゃないけど、でも札幌から直接足寄じゃなくて帯広を経由して段々と人口が少なくなっていったのでそれほどは・・・。」と言いつつも引っ越してきた当初は、お子さんも小さかったため病院などの通院に不便も感じたという。「でもまあすぐにお友達も出来たし、住めば都ですよ!」と満面の笑みであっけらかんと話してくれた。明るくて、丁寧に人と

接してくれる清香さんは、話しも分かりやすく、商売するならこんな女将さんがいいんだろうなぁとそう思わせてくれるそんな素敵な奥様だ。

 

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「手作りお菓子 しょうげつ」3代目の朝は早く、午前5時半頃から作業が始まる。

お店には、常に25~30種類のケーキ類と、15種類前後の焼き菓子が並ぶ。それを一手に作っているのだから大変な仕事だと感心していると「普通でこれくらいの数の種類ですよ。」とパティシエは涼しい顔で呟いた。そこには微塵の甘さもなく、甘いのは彼の作るスウィーツだけだった。

なんだかうまい事言っている風になってしまったが、「しょうげつ」では、素材もなるべく地元に近いものを使う事を良しとし、木苺などは足寄産を

使い、そして3代目はそれを「当然の事」と言い切る。やっぱり甘いのは彼が作るスウィーツだけなのだ。そしてお菓子作りについては、「楽しいです。全然飽きないからずっとやってる。」にっこりとしてそう話し、ようやく甘い顔を見せてくれた。

 

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「しょうげつ」の味と言えば、初代から販売している「あんドーナツ」だろう。

直径5センチ程、一口サイズの「あんドーナツ」は、上質な十勝産の小豆を甘さ控えめに炊いた餡子に薄いドーナツ生地を纏わせ、「白絞油(しらしめゆ)」という大豆から出来た油であっさりと揚げられる。修寛さんはこの作業を2代目の父との共同作業で行ってきたが、「孝明」さんが今年5月に

お菓子作りから引退したため、現在は一人で「しょうげつ」伝統のお菓子を作り続けている。祖父が作り、父へと引き継がれた「味」を今、3代目が

しっかりと受け継いだのだ。一方で3代目は、パティシエとして新しい名物を次々と創り出す。現在の「しょうげつ」の看板は、「あしょろーる」というロールケーキ。3代目は足寄に帰ってくる以前、いつか戻る故郷で十勝や北海道産の原材料で作ったロールケーキをこの足寄の名前が入った商品名で

売り出そうとずっと温めてきたそうだ。そんな想いが巻かれた「あしょろーる」は、今では足寄土産として立派に存在感を示している。

 

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「しょうげつ」のもう一つの味として「焼き菓子」が挙げられる。ヘルシー志向の昨今「油で揚げないドーナツ」である「焼きドーナツ」は「しょうげつ」の新しい名物商品となりつつある。プレーン、チョコレート、キャラメルなどがあり、老若男女に人気の商品だ。そしてこの「焼きドーナツ」に加えて「クッキー」「フィナンシェ」「パウンドケーキ」などが詰め合わせとなった「シェフの焼き菓子 14種詰め合わせ」は、足寄町の「ふるさと納税」の返礼品として高い人気を誇っている。是非あなたにも「ふるさと納税」していただいてこの「しょうげつ」の焼き菓子を味わっていただきたい。

 

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「手作りお菓子 しょうげつ」では、その季節、季節で旬な素材を使った期間限定のお菓子を作っている。果物のおいしい季節には、旬の果物を求肥と

ふわっふわの生クリームで包んだ洋風な「大福」が人気だ。「イチゴ」や「桃」、「シャインマスカット」に「柿」などその時期のおいしい果物の大福が味わえる。そしてこの季節になるとそうクリスマスケーキ。「しょうげつ」では、定番のクリスマスケーキのほか、限定品など全部で7種類のクリスマスケーキを用意し、予約を受け付けている。こんな美しいケーキを見るとおじさんでもワクワクしてくるからケーキの魔術は侮れない。

 

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「しょうげつ」はこの秋、店舗を新しくリニューアルしてまた一歩、歩みを進めた。71年前に初代が創業した和菓子屋さんは、今はその孫が洋菓子店として受け継ぎ、素敵な伴侶とともに足寄町民に愛されるスウィーツを作り続ける。そんな僕らの大切な「しょうげつ」の「味」を、あなたにもお裾分けしたいと思う。

 

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「手作りお菓子 しょうげつ」 足寄郡足寄町南2条1丁目19  TEL (0156)25-2225  

営業時間 9:00 ~ 18:00 日曜・祝日 9:00 ~ 17:00  毎週火曜日定休

 

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足寄町ふるさと納税

https://www.town.ashoro.hokkaido.jp/citypromotion/furusato-nozei/furusato_c.html

 

 

 

 

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