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足寄物語~Ashoro Stories その3「オンネトーを愛する男」

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「オンネトー」。アイヌ語で「年老いた沼」の意味を持つこの湖は足寄の東部「阿寒摩周国立公園」内にある。季節や時間によって刻々とその湖面の色が変化する事から別名「五色沼」とも呼ばれる大変美しい湖だ。しかし前述の通り「阿寒摩周国立公園」に含まれている事からどうしてもお隣の釧路管内かと思う方が多い。ここは声を大にして言いたい「オンネトーは、十勝の足寄町です!!」※1

背後に雌阿寒岳(ポンマチネシリ)と阿寒富士が悠然とそびえ、その姿が湖面に映し出される絵はえも言われぬ美しさ。もう一度言おう「オンネトーは十勝の足寄町にあるんです!」

 

1Photo By 金根

 

「オンネトー」は湖の名称だが「雌阿寒岳(ポンマチネシリ)」や「阿寒富士」、更にはマンガン酸化物生成現象が地上で見られる世界唯一の場所、国の天然記念物にもなっている「オンネトー湯の滝」や1914年創業の「野中温泉」の「雌阿寒温泉」などを総称し「オンネトー地区」と呼んでいる。

「阿寒摩周国立公園」の中でも特に手つかずの自然を満喫できる地区の一つで、そこが私たちの自慢でもある。他にも「錦沼」「白藤の滝」「アカエゾマツ純林」などの見どころがあるので「あしょろ観光協会」の公式サイトをご覧いただきたい。

そんな「オンネトー地区」に2020年の春先から、まあるい顔にメガネをかけたなんとも憎めない風体の男がちょくちょく出没するようになった。男の名は「金根(きんこん)」。「金」が苗字で「根」が名前だ。

足寄の町民向け広報紙で「金根観光=キンコンカンコー」というコラムも担当している中国からやってきた「地域おこし協力隊」が彼の正体。現在は足寄町役場の「経済課商工観光振興室」に席を置き、オンネトー地区の情報発信を含め野営場の水質管理等の業務を行うため週に2~3日オンネトーに通っている。愛称は「金ちゃん」。「えーとなんて言いますかねぇ。」が口癖の30歳、独身。(2021年現在)

金ちゃんは中国の最北東部、ロシアと隣接した「黒龍江省」で生まれ育ち、19歳まで暮らした後、語学留学のため来日。その間に東日本大震災を経験し一時帰国していた際に自身の故郷が、例えばゴミ処理、例えば農地管理と言った環境保全の面で立ち遅れている事に気づく。

これをきっかけに「環境問題」に興味を持った金ちゃんは再び来日し、猛勉強の末2014年に長野県の信州大学農学部森林科学科に入学。「造林学研究室」の「岡野哲郎(おかのてつお)」教授の下、「森林生態学」を学び始める。この岡野先生との出会いこそ、その後足寄町で働く事になるきっかけになるとはその頃の金ちゃんが知るはずもなかった。

 

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現在信州大学で教鞭をとる「岡野哲郎」教授は元々九州大学で長く助教授などを務め、足寄にある「九州大学演習林」の林長も務めていた方で木質ペレットを製造・販売する「とかちペレット協同組合」立ち上げの際にもその知識を存分に提供・貢献していただいた足寄町とは縁の深い人物である。

その岡野先生に師事した金ちゃんは、2016年から九大演習林での実習研究で毎年足寄を訪れるようになり、その間に足寄の同年代の友人もできてどんどん足寄を好きになっていった。

4年経ち大学を修了した金ちゃんは研究者を目指すべくそのまま大学院へと進み勉強を続けたのだが最終的に「自分は研究者には向いていない」という衝撃の研究結果を導き出し大学に残る事を諦め日本での就職を模索。そこに恩師岡野先生が「足寄はどうだい?」とアドバイスをくれ、足寄を好きになっていた金ちゃんは即答で「はい。足寄に行きたいです。」と答え現在に至っている。

そんな経歴の金ちゃんだからオンネトーの自然に惹かれるのは当然の事。毎週オンネトーに通い、森の中でオンネトーに生息する鳥や虫や樹木、草花の写真や動画を撮影しながら情報を発信したり、自らの勉強としている。頭上を見上げて鳥を見つけたかと思えば、今度は足下に目をやり草花の写真を撮っている。オンネトーにいる時の金ちゃんは「向いていない」と諦めた研究者のようだ。

 

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クマゲラ (Photo By 金根)

 

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ウソ (Photo By 金根)

 

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クリンソウ (Photo By 金根)

 

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ゴゼンタチバナ (Photo By 金根)

 

金ちゃんが撮影したこれらの草花の写真は「オンネトー野営場」の管理棟の壁にひっそりと掲げられている。本人曰く「下手だから見る人があまりいない・・・。」とちょっと寂しげな様子。

今は多くの人に見てもらえるよう鋭意思案中の金ちゃん。オンネトーにお越しの際はこの「オンネトー金ちゃん大図鑑」(!?)を是非ご覧になっていただけると彼の励みになる事間違いなしである。

さて樹木や森林を専門に学んだ金ちゃんに「オンネトーの森」について聞くと「かなり面白いんですよ。」

メガネの奥の目が光った。一体何が面白いのか?金ちゃんによるとここには雌阿寒岳を登るための「雌阿寒温泉コース」の登山口に「アカエゾマツ純林」という森が広がっている。

この「アカエゾマツ純林」は元々何もない土地に森林が形成される過程の初期段階の森で、金ちゃん曰く「かなり貴重なもの」だという。そこからオンネトー湖畔の遊歩道を歩き野営場まで抜ける道程は、オンネトーの森が形成された段階を順に見る事ができるのだそう。

そこまで解説してくれると金ちゃんはロマンに満ちた目でこう言った。「この2.2キロの道はかなり面白いです。なんて言いますかね『アイヌ』の方々が100年前、200年前に見てた森なんです。」

 

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Photo By 金根

 

さて「オンネトーを愛する男」金ちゃんにオンネトーの楽しみ方を聞いてみると「季節、季節で楽しみ方があるんですが、冬は道路が閉鎖されるのでスノーシューをはいてオンネトーに向かうと静寂に包み込まれ、湖面も凍るのでそこも歩ける。もちろん他にも雌阿寒岳登山だとか温泉もあるし、バードウォッチングや植物鑑賞、そして写真撮影のポイントとしても抜群です。なんと言いますかね。

バードウォッチングは季節よりも時間ですね。やはり早朝の方がおすすめです。」

金ちゃんは今後オンネトーがどうなっていってほしいのだろう?そんな質問を投げかけてみた。

すると「正直今のままでいいです。やはり手つかずの自然を楽しんでほしい。」と答えた。

加えて彼が大切に思う自然を楽しむ方法のアイディアも語ってくれたがそれは今後のオンネトー観光の姿を見てほしいと思う。

「オンネトーを愛する男」金ちゃんは「オンネトーに愛される男」になるため今日もオンネトーに行く。

 

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【編集者注釈】

#1 足寄町民であればオンネトーの美しさを大声で誇らずにはいられないのですが、その美しさは一つの町では有り余り、行政会や地域を超え、人類の宝として後世に引き継いでいきます。

なお、オンネトーのある足寄町東部は、昭和初期まで釧路国足寄村でした。昭和23年に足寄郡足寄村が十勝支庁に編入、昭和30年に西足寄町と合併し、現在の足寄町になっています。当時の国ざかい「利別川」に架かる橋は、「両国橋」としてその名を今に残しています。

 

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